[沖縄県金武町]未来型観光産業に伴う地域再生ビジネスモデルの調査
社会インフラの建設工事や農地開発に伴う赤土の発生と流入の対策を目指して
1-1 調査の目的
沖縄県内では、本土復帰を契機にして道路や公園、上水道や下水道などの社会資本の整備やサトウキビ畑、パイン畑などの農地開発が急激に進められ、これに伴って河川や海域への赤土砂(以下、赤土という)の流出が発生し、河川や海域の底に赤土の微粒子が沈殿して、水質や生物環境への影響が懸念されている。
また、沖縄県の主要産業である観光産業において、エコツーリズムなどの亜熱帯性の豊かな自然環境を活かした、環境体験型の観光が増えつつある現状では、赤土の流出に伴う河川や海域の汚濁や生態系への悪影響は、豊かな自然環境を観察する上でマイナス要因となる。
本調査は、赤土流出対策の一つとして、高分子マイクロフィルターによる濾過式装置による赤土汚濁水流出の防止効果を検証し、この装置が赤土で汚濁した河川や海域底の修復を図る手段としての可能性を確かめるとともに、この装置が自然環境を活用した観光産業として地域と連携したビジネスモデルと成りうるかどうかについて検討を行い、もって地域の活性化を図ることを目的とするものである。
1-2 調査の内容
(1)赤土汚濁水の流出対策の検討
降雨時や河川改修、農地改修時に河川に流入する赤土汚濁水を、2章で示した濾過装置で濾過する現地試験を実施して、濾過装置に流入した汚濁河川水(汚濁水)と高分子マイクロフィルター及び中空糸膜で濾過した河川水(濾過水)について水質試験を行って、汚濁水の浮遊物質量(SS)や濁度、汚濁水が含有する肥料成分の窒素やリン、カドミウムやヒ素、鉛などの有害物質、銅や鉄などの金属成分を除去することができるかどうかを検証した。
また、町内の沿岸海域で河川からの赤土砂の流出状況について現地調査して、流出した赤土の実態と、濾過装置の設置による修復の可能性について検討した。
(2)環境学習調査
地元の小学校の児童等を対象にして、赤土汚濁水の浄化方法の説明と、水質調査の体験する環境学習を行い、自然環境保全の意識の啓蒙を促して、将来の環境保全活動を担う人材の育成を図った。
(3)自然環境を活用した未来型観光産業のあり方の検討
ボランティア活動で赤土の流出を防止することの可能性と、濾過した河川水の利用、濾過装置で除去された微小な粒子の赤土が有効利用できないかどうかについて、検討した。
1-3 調査の実施場所
金武町屋嘉地内 渡久比那川上流
■ 調査の実施場所
国土地理院1/25000(石川)を使用
国土地理院1/25000(石川)を使用
高分子マイクロフィルターと中空糸膜を活用した濁水ろ過装置
高分子マイクロフィルターの特徴
- 非対称構造のため目詰まりが少なく連続ろ過が可能
- 高濃度汚濁水のろ過が可能
PVDF中空糸膜ろ過器の特徴
- 省スペース、省コスト(使用本数により大量処理可能)
- 膜充填率が高く、高回収率運転可能
- MF膜により、高膜ろ過流速運転可で、膜面積あたりの処理量を大きくとることが可能
- 外圧全量ろ過方式のため操作が単純・運転しやすい
- 低圧運転可能でエネルギーコストを低減する
- 安全性の高い部材で構成されている
- 浄水場ろ過装置用のろ過膜(「水道用膜モジュール規格認定」取得済)
両者を組合せることによるメリット
- 物理的ろ過システムのため化学薬品を使用しない
- 高濃度の汚濁水を水道水相当の清澄水にろ過可能
- 処理水の品質向上により、多数のニーズに対応可能
- 現場スペースに対応できコンパクト性と機動性がある